2014.9.3(水)
先日の高校軟式野球。
準決勝(中京対崇徳)の試合で、3度のサスペンデッドを経て50イニングの死闘が繰り広げられたのはご存知の方も多いかと思います。49回まで互いに無得点。全然打てなかったのではなく、何度も本塁ベースを巡る攻防がありながらもそれを切り抜けてのゼロ行進。もう「死闘」以外の言葉が見つからないくらいのものすごい試合でした。
両チームの投手が4日間50イニングを完投したのがもっとすごい。体が言うことを聞かなかったと言います。再試合ではなく継続試合だったこともベンチの判断を難しくした要因だろうと思います。
勝った中京高校は試合の直後、すぐに決勝戦に臨まなければならないというタイトなスケジュールでしたが、見事優勝を果たしました。
正直、硬式と比較して注目度の低い高校軟式野球ですが、全国460校が出場しており、種目としては規模の大きい部類に入ると思います。
この試合を受け、各方面から賛否両論の声が聞かれます。
「高野連は子どもの身体を何だと思っているの?」「投げさせ続けた監督が悪い」「抽選やタイブレークを導入すべき」という非難の声も聞かれます。教育評論家もこの試合についてブログで異論を唱えています。その一方で、「これで高校野球が終わると思ったら代えてくれと言うはずがない」「抽選やタイブレークなどで決着付けられたら、それまで頑張ってきた球児がかわいそう」などという意見もあります。事実、夏の甲子園の時に球児に「タイブレークを導入すべきか?」という趣旨のアンケートをとり、大多数が「導入すべきでない」「導入してほしくない」と回答しています。
高野連は、「今後、選手の身体に負荷が少ないルールに変更していく」という見解を示していますが、「勝利」か「選手の将来」かという問題は、野球に限らずどの競技でも永遠のテーマですね。少年野球でもそうです。
仙台市少年野球の大会では最大のイニング数が決まっており、それを超えるとタイブレークを行うことにしています。スポ少の大会では抽選というケースもあります。ダブルヘッダーという場合もありますが、間に十分なインターバルをとるように時間設定されています。
指導者も選手も「そういうものだ」と納得して練習をやっていると思いますので、どのような展開になっても恨み節は出ません。
選手に「やりたい」「目標を達成したい」という意思がある中で、運営や指導者のほうからストップをかけることは心苦しいものです。
この記事を書いていて、日本シリーズでの中日山井投手の完全試合をめぐる落合監督(当時)の起用を思い出しましたので書きます。
2007年でしたでしょうか、5回で手の豆をつぶしながら完全試合ペースの投球を続けていた山井投手を8回で降板させた采配が賛否両論を呼びました。
日本一がかかった場面であったこと、その後本拠地を離れての試合になること、試合の点差、そして山井投手が大舞台で大記録を達成するチャンスがあったことなど、判断を迷わせる要素は数多くあったと言います。
最終的には、山井投手の「(ストッパー役を務めていた)岩瀬さんでお願いします」という一言で決断できたと、落合監督、そして参謀役だった森ヘッドコーチは著書で明かしています。山井投手の後を受けてマウンドに上がった岩瀬投手も、「1人のランナーも許されないと思った」などとコメントしており、相当のプレッシャーと戦っていたことがわかります。そこで3者凡退に抑え胴上げ投手となった岩瀬投手ですが、もしプレッシャーに負けて普段通りの投球ができなかったならば、無安打無得点試合どころか勝利、日本一すらも逃す結果になっていたかもしれません。
判断を間違えばそれまで積み上げて来たものが一気に崩れるということはあります。
少年野球でもあります。「ここで勝たないと意味がない」というケースが年に何度かはあります。
そういう状況でも、後悔せず納得できる判断のできる、そして選手を守ることのできる指導者でありたいと思います。
状況を読み間違えて、いつでも無理を強いる指導者にはなりたくありません。
話は最初に戻りますが、投手をはじめ選手を守るルールがなく、結果的に4日で50イニングも試合をすることになったわけですが、おそらく延長50回の試合では両校にとって「投手を代える」という状況ではなかったのだと思います。エースが1人で投げ抜くことが美徳とされる風潮もありますが、その判断が両校にとっての最善だったということなのだろうと思います。
ベンチワークって本当に難しいです。
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